冠攣縮性狭心症の症状とメカニズム
狭心症の種類は大きく分けて2つ、運動しているときに発症する「労作性狭心症」と、安静時に発症する「冠攣縮性狭心症(安静時狭心症)」があります。ここでは、日本人に多いと言われている冠攣縮性狭心症について解説します。冠攣縮性狭心症の症状や特徴、診断方法、治療法などに加え、その原因となる血管の異常収縮についてもまとめています。
- 冠攣縮性狭心症とは
- 冠攣縮性狭心症の症状
- 冠攣縮性狭心症のメカニズム
- 冠攣縮性狭心症の誘発因子
- 冠微小血管攣縮について
- 冠攣縮性狭心症の診断方法
- 冠攣縮性狭心症の治療方法
- 冠攣縮性狭心症の予後
- 冠攣縮性狭心症の予防方法
- 冠攣縮性狭心症の体験談
目次
冠攣縮性狭心症とは
冠動脈がけいれんすることを「冠攣縮」と呼びます。「冠攣縮性狭心症とは、冠動脈のけいれんが原因で発症する狭心症を指します。冠動脈のけいれんにより心筋の栄養血管である冠動脈の内部が狭くなり、血流が悪くなってこの症状が起こります。
安静時に発作が起きやすい
冠攣縮性狭心症の特徴として、夜間や早朝などの安静時に発作が起こりやすいという点が挙げられます。そのため、安静にしていても動悸や息切れがする場合には冠攣縮性狭心症を疑う必要があります。
突然死に至るケースもある
冠攣縮性狭心症は比較的予後が良好とされている疾患ですが、中には突然死に至るケースもあり、夜間の突然死には冠攣縮性狭心症が深く関与していると言われています。
実は狭心症の4割から6割は冠攣縮によって起きていると言われており、それが心筋梗塞にも繋がっているのです。
日本人に多い疾患
日本人の冠攣縮性狭心症は、欧米人に比べて3倍多いと言われています。特に50代、60代、70代の男性において発症率が高くなっていますが、若年層においては器質的なものを原因とする狭心症よりも、冠攣縮を原因とする狭心症の方が多い傾向があります。
冠攣縮性狭心症の症状
冠攣縮性狭心症を発症すると、胸の痛みや冷や汗、動悸などの症状が起こります。その痛みは「胸がしめつけられる」「胸が焼け付く」ようなものだと言われていますが、肩、背中、歯、後頭部などに痛みが現れることもあります。
安静時に15分程度の胸部痛
狭心症全般の症状として、「胸の痛み」が挙げられます。胸の中央からみぞおちにかけて圧迫されるような痛みや締め付けられるような痛みが生じ、その持続期間はおよそ15分程度。あまりに痛みが長く続く(30分以上)場合には心筋梗塞も疑われます。また、1分程度の胸痛の場合には狭心症ではないケースが多いと言われています。
動悸
動悸も冠攣縮性狭心症の代表的な症状。就寝時に激しい動悸で目が覚め、冠攣縮性狭心症が発覚したという例もあります。
冷や汗
冠攣縮性狭心症を発症した場合、冷や汗も伴うことがあります。激しい胸の痛みとともに冷や汗の症状が見られた時は要注意です。
顎や肩への放散痛
発作が起きた際に、胸の痛みだけではなく「放散痛」としてさまざまな部位に痛みが出ることがあります。例えば顎や肩、背中、左右の腕などに痛みが出ます。また、歯の痛みとして感じる場合もあり、虫歯だと思っていたら心臓の疾患が原因だった、というケースもあるそうです。
冠攣縮性狭心症のメカニズム
冠攣縮性狭心症は、心臓に酸素や栄養を送る冠動脈が何らかの理由でけいれんすることで起こります。冠動脈がけいれんすると一時的に冠動脈の一部が狭くなり、心筋に送る血液量が減少して酸素を供給できなくなります。一般的には太い冠動脈にけいれんが起こることで発症しますが、心筋内の微小な冠動脈でも発生することがあります。
心臓に送られる酸素が不足した結果、胸の痛みや動悸など、さまざまな症状を生じるのが冠攣縮性狭心症です。就寝時など安静にしている時にも起こるため、「安静時狭心症」とも呼ばれています。
冠攣縮性狭心症の誘発因子
冠攣縮性狭心症の原因については、実ははっきりとはわかっていません。ただし、喫煙や飲酒、ストレスなどは、その発症に何らかの影響を与えていると考えられています。
喫煙
冠攣縮性狭心症の発症には、喫煙が大きく関わっていることがわかっています。実際に冠攣縮性狭心症を発症した患者の中では、喫煙者の割合が8割を超えているというデータもあります。また、喫煙者本人だけではなく、受動喫煙による影響も考慮する必要があります。
喫煙がなぜ影響するのかというと、タバコの煙を吸い込むことにより、体内で酸化ストレスや炎症を引き起こすため。このことにより血管内皮の機能障害や動脈硬化性因子の活性に繋がってしまうことで、全身の血管障害を引き起こすと考えられています。その代表的なものが冠攣縮であると言われているため、冠攣縮性狭心症を発症した場合には禁煙することが推奨されます。
飲酒
日本の冠攣縮性狭心症患者において、常習的に飲酒の習慣を持っているという例が多く見られます。
アルコールを摂取するとマグネシウムの排泄を促すことから、体がマグネシウム不足に陥りやすくなります。冠攣縮性狭心症にはマグネシウム不足が関わっている可能性もあり、実際に深酒をした翌朝に冠攣縮性狭心症による突然死が起きたケースも報告されています。そのため、アルコール量の制限または禁酒を実施する必要があります。
脂質異常・糖代謝異常
冠攣縮性狭心症を発症した場合、脂質代謝異常・糖代謝異常を併発しやすいという報告があります。このことから、冠攣縮性狭心症は中性脂肪代謝の異常やHDLコレステロール値の低下、耐糖能異常など酸化ストレスとの関連性が示唆されています。
ストレス
メンタルストレステストを行うことによって冠攣縮の発作が引き起こされるというデータがあり、精神的なストレスが冠攣縮性狭心症に関与しているとも考えられています。そのため、仕事や日常生活において身体的・精神的苦痛を多く受けている場合には、発症の要因となる可能性があります。
また、過換気によって冠攣縮が引き起こされることもわかっていますが、ストレスは過換気状態を作りだす大きなきっかけにもなっているため、適度にストレス解消を行うことが必要と言えるでしょう。
遺伝的要因
冠動脈に関連する疾患については、比較的家族内の発症が多く見られます。生活習慣に問題なしと判断されている場合でも発症することもあることから、冠攣縮性狭心症には遺伝的な要因が関与すると考えられています。
特に日本人に多い冠攣縮については、「eNOS(内皮型一酸化窒素合成酵素)」の遺伝子異常が示唆されています。
冠微小血管攣縮について
狭心症のような症状を訴えているため冠動脈造影検査を行ったが、狭窄の病変がなく、さらに冠攣縮誘発試験でも攣縮部位が見られないというケースもあります。このような場合には「冠微小血管攣縮」による狭心症が疑われることがあります。
冠微小血管攣縮はいまだに診断基準が標準化されておらず、治療法についても一定の見解がありません。そのため、今後は診断基準の統一と、治療法の確立が求められています。
冠攣縮性狭心症の診断方法
冠攣縮性狭心症の場合、症状の持続時間が短いために病院を受診した時には症状がおさまっているケースがほとんどです。そのため、診断を行う際には病歴の聴取と検査が重要です。
診断確定のためにはホルター心電図や超音波検査、心筋シンチグラフィーなどさまざまな検査が行われます。
心電図・ホルター心電図
狭心症を発症した場合には心電図に異常が見られます。ただし、その異常は症状が起きた時のみに現れ、症状が治まってから心電図検査を受けても正常な結果が出てしまうことが多いため、診断が難しいと言われています。
そのため、異常を記録するため、体の表面に電極を貼り付けて24時間心電図を記録するホルター心電図を使用します。ホルター心電図は非常に小さく携帯可能な心電計であり、検査を受ける人の負担が少ないという特徴があります。ホルター心電図を使えば、自覚症状がない場合でも冠攣縮による心電図の変化を確認できます。
トレッドミル負荷試験
動くベルトコンベアの上を歩いて運動を行うことで心臓に負担をかけ、どのように心電図に変化が起こるかを確認するための検査がトレッドミル負荷試験です。同様の検査に、階段昇降や自転車エルゴメーターを使用するものもあります。
運動負荷試験は行う時間帯によっても結果が変化します。発症しやすい早朝に行うと発作を誘発しやすくなりますが、運動負荷試験によって冠攣縮が誘発されても、自然発生した場合よりも比較的軽度であることが多いと言われています。
心臓超音波検査
いわゆる「心エコー」と呼ばれる検査です。この検査を行うことで、心臓の大きさや心筋の動きなどを確認します。心臓超音波検査は、高周波の超音波を心臓に当てた際の反射波(エコー)を処理し、画像で表示します。このことで心臓がどのように動いているかが確認できるため、多くの心臓疾患の診断に使用されています。
検査を行う際には、胸に「プローべ」と呼ばれる超音波の発信・受信を行う機器を当てるだけなので、痛みなどはありません。
心筋シンチグラフィー
心筋に取り込まれる放射性同位元素を注射した後に、特殊なカメラで撮影することによって心筋への血流や心臓の機能を確認する検査です。そのため、狭心症や心筋梗塞など心臓疾患全般の診断によく使用されています。
中には検査における被曝についてきになる人もいるかもしれませんが、検査の際に使用する放射性同位元素が体内に残ることはないため、被曝量はごくわずかで済みます。
心臓カテーテル検査
手足にある動脈から「カテーテル」と呼ばれる1mmから3mm程度の細い管を挿入して、心臓の検査を行うものです。冠動脈までカテーテルを挿入し、造影剤を注入して冠動脈をX線撮影します。
この検査によって冠動脈の血流がどのようになっているのか、そしてどの部分が狭窄しているのかといった状態を確認することができます。狭心症のほか心筋梗塞などの確定診断にも使用されている検査です。
マルチスライスCT
手の静脈から造影剤を点滴しながらCTを撮影することにより、冠動脈を観察できるものです。心臓カテーテル検査は入院が必要なため患者の負担も大きくなりますが、マルチスライスCTの場合は外来で検査することが可能。撮影時間も非常に短縮できるため、乳幼児や高齢者、重篤な患者でもしっかりと撮影することができ、診断に役立てることができます。
誘発試験
冠攣縮を誘発する薬剤を冠動脈に注入することにより、その時に起こる症状や心電図の変化や血管造影の所見から診断を行うものです。多くの場合診断が可能となりますが、中には冠攣縮が誘発されない場合もあります。冠攣縮性狭心症は夜間から早朝に発症するケースが多いため、朝早い時間に行われることが多い検査です。
また、ストレスも冠攣縮性狭心症の原因の一つとされていることから、メンタルストレステストが行われる場合もあります。検査方法は一律ではないものの、多く行われている手法としては、早朝の安静時に患者に暗算をさせる方法が取られています。精神的に負荷をかけることにより冠動脈の収縮が起こるかどうかを検査します。
冠攣縮性狭心症の治療方法
冠攣縮性狭心症と診断された場合には、主に薬物療法が行われますが、他にもカテーテル治療や外科手術といった方法が用いられることもあります。診察・検査を行った上でどのような状況かによってどの治療法を用いるかが判断されることになります。
薬物療法
発作時に使用される硝酸薬や、発作を予防するためのカルシウム拮抗薬などが使用されます。
硝酸薬
ニトログリセリンや硝酸イソソルビドなどの硝酸薬は血管を拡張する作用があります。また、末梢の血管も拡張させることができることから、心臓に戻ってくる血液の量も減り、心臓にかかる負担も軽くなります。 特に発作が起きた時に用いられるのがニトログリセリンですが、投与すると3分程度で効果が現れます。舌下錠や口腔内スプレーがあり、患者は常にニトログリセリンを持ち歩いて発作時に使用します。特に舌下錠の場合には飲み込むと即効性がなくなるため、舌の裏で薬を溶かす形となっています。いずれも無効の場合にはすぐに医療機関に連絡を入れることが必要です。
カルシウム拮抗薬
カルシウムの働きを抑える「カルシウム拮抗薬」を使用することで、冠動脈を収縮させている平滑筋を弛緩させます。カルシウムは血管が収縮する際に働くという特徴を利用し、冠動脈を拡張させることを目的としたものです。代表的な薬としては、アダラート、アムロジン、コニール、ヘルペッサー、ワソランなどがあります。 また、冠動脈の痙攣を抑えることができるので、就寝前に服用することにより冠攣縮性狭心症の発作を予防するために有効とされていますが、グレープフルーツジュースはカルシウム拮抗剤の高圧作用を増強するという作用があるため、グレープフルーツの摂取は避ける必要があります。
ニコランジル
上でご紹介している硝酸薬と同様、冠動脈と末梢の血管を拡張させることを目的としている薬です。血管を拡張することにより、心臓への負担を軽減することができます。さらに、心筋を保護する作用も。具体的な薬名としては、シグマートなどがあります。
抗血小板薬
血栓ができることを防ぐ、いわゆる「血液をサラサラにする」ことを目的としている薬で、バイアスピリンやパナルジン、プラビックスなどがあります。一般的に、ステントによる治療を行った後には2種類の抗血小板薬を使用して治療を行っていくケースが多くなっています。
ファスジル(Rhoキナーゼ阻害薬)
ファスジルとは、強力なRho阻害剤および血管拡張薬です。冠攣縮性狭心症の発作が起こった場合には、通常は硝酸薬やカルシウム拮抗薬によって寛解・抑制することが可能ですが、ただし、これらの薬剤に抵抗性を示すものについては「難治性冠攣縮性狭心症」と呼ばれています。 冠動脈バイパス術を行った直後に難治性の冠攣縮が起きた症例に対してファスジルを投与したことにより症状が改善したという報告があります。そのため、今後の難治性冠攣縮性狭心症において有効な治療方法となることが期待されています。
カテーテル療法
場合によってはカテーテルによる治療が選択されることがあります。主に経皮的冠動脈形成術(PCI)、冠動脈内ステントの2種類の方法が挙げられます。
経皮的冠動脈形成術(PCI)
先端にバルーンをつけたカテーテルを冠動脈まで通し、狭窄が起きている部分に対してバルーンを膨らませ、内側から広げて血流を確保する治療法です。
ただし、この治療を行った後に再度冠動脈が狭窄してしまうこともあり、その割合や3割から4割と言われています。再度狭窄が起こった場合には再治療を行います。冠動脈内ステント
カテーテルにつけたバルーンに、金属でできた筒(ステント)をかぶせて狭窄部に挿入することで、血管を内側から補強する治療法が冠動脈内ステントです。治療を行った後もステントは体内に残り、冠動脈の狭窄を防ぐことができるので再度同じ部分が狭窄することを防げます。
また、現在では単にステントを入れるだけではなく、このステントに再狭窄を防ぐための薬をコーティングしたものも用いられています。治療を行ったのち、薬は徐々に血管壁に浸透していくことになりますので、狭窄を防ぐ方法として有効とされているものです。
外科療法
必要に応じて、外科療法が行われることになります。狭心症の場合は冠動脈バイパス手術と呼ばれる手法を用います。この手術は、狭窄している冠動脈はそのままにして、新しい血管の通り道を作ることで心筋への血流を改善するという治療法になります。
一般的に、人工心肺を用いることで一時的に心臓を止めながら手術を行う「オンポンプ手術」が多く用いられてきました。しかし最近では、人工心肺を使わない「オフポンプ術」で心臓が動いたまま手術を行うケースが増えてきています。この方法の場合、オンポンプ手術よりも侵襲が少ない事から、リスクの高いと判断される患者の場合でも手術が可能となります。
非薬物療法
治療を行う際には、薬や手術を伴わない「非薬物療法」も並行して行うことが必要です。 冠攣縮性狭心症の場合には初期の動脈硬化による血管内皮障害が関連していることがわかっているため、動脈硬化の危険因子を取り除くことは重要とされており、中でも喫煙と冠攣縮性狭心症は深い関わりがあることから、禁煙については取り組まなければならないとされています。喫煙習慣のある人はもちろん禁煙が必要ですが、受動喫煙についての影響も考えた方がよいでしょう。受動喫煙の方が高い感受性を示すため、家族や周囲の人にも禁煙に取り組んでもらうべきです。
さらに、肥満傾向のある人は適正体重の維持、高血圧を指摘されている人は血圧管理にも取り組みます。 また、ストレスや寒暖差によって発作が誘発されることもあります。そのためストレスを上手に緩和すること、冬や寒い地域などでは朝晩の寒冷に注意することが必要です。ただし、ストレス解消のためにと冬の早朝に運動を行うと冠攣縮を引き起こすことがあります。ストレス解消に運動を取り入れる場合には、その程度やタイミングを見極めながら実施するようにしましょう。
冠攣縮性狭心症の予後
一般的に冠攣縮性狭心症の予後は良好とされています。ただし冠動脈の器質的な狭窄にけいれんを合併した場合や、冠攣縮が不安定化してしまった場合には、急性心筋梗塞を引き起こすケースもあります。
また、治療中・治療後においても血管の攣縮を誘発する危険因子は取り除かなければなりません。喫煙や過度の飲酒、心身の疲労やストレスを避けるように心がけましょう。
冠攣縮性狭心症の予防方法
これまで、冠攣縮性狭心症の原因となる冠動脈のけいれんがどうして起こるのか、はっきりとしたことはわかっていませんでした。しかし、山口大学医学部の小林教授と研究チームでは、血管の異常収縮を起こす原因物質を突き止め、さらにその作用を抑制する成分を発見しました。このような経緯で開発された「小林式EPA」についてご紹介します。
血管の異常収縮の原因「SPC」
小林教授と研究チームは、世界で初めて血管が攣縮する原因となる「SPC(スフィンゴシル・ホスホリル・コリン)」と呼ばれる脂質を発見しました。このSPCは、体の細胞膜を構成する成分から簡単に作り出せてしまうもの。そのため、血管の異常収縮は特定の人だけではなく、どんな人にも起こりうるということがわかっています。
このSPCが細胞質で作用した場合、「Fyn」と呼ばれる酵素が、細胞膜内にある「膜ラフト」という部分に移動して活性化されます。この働きにより、血管の収縮を調整する働きを持つ「Rhoキナーゼ」と呼ばれる酵素が膜ラフトに移動して活性化されて血管の異常収縮が起こります。これが小林教授らによって解明された、血管の異常収縮が起こる仕組です。
異常収縮に効くEPAと効かないEPAがある
小林教授と研究チームは、青魚の油に多く含まれているEPA(エイコサペンタエン酸)に、SPCを抑制する作用があることを発見。しかし、さまざまな魚油メーカーからEPAを取り寄せて研究を続けるうちに、血管の異常収縮に効くEPAとそうではないEPAがあることがわかりました。
異常収縮に作用するEPAとは、生の青魚に含まれる立体構造のEPAです。しかし、EPAの精製過程で熱などが加わると、この立体構造が変化し、血管の異常収縮への効果が減ってしまうことを突き止めました。
血管の異常収縮を抑制する「小林式EPA」を開発
これらのことから、小林教授はオリエンタルバイオグループとの共同研究により、血管の異常収縮を抑制するEPAの開発に着手しました。度重なる試行錯誤の末、精製方法を一から見直すことで、生の青魚に含まれるEPAの立体構造を維持したまま精製することに成功。このEPAに血管の異常収縮を抑える作用があることも確認されています。
こうして開発された成分を、従来のEPAと区別して「小林式EPA」と命名。血管の異常収縮を抑える効果が認められた、世界で初めてのEPAです。
EPAを吸収しにくい人もいる
EPAを吸収することによって血管の異常な収縮を抑制できますが、中にはうまくEPAを吸収できない人もいます。例えば年齢を重ねた人は吸収に必要な胆汁の分泌が少なくなっているため、同じ量のEPAを摂取しても、十分に吸収することができません。
そこで、小林教授らはEPAを吸収しにくい人のために研究を重ね、EPAと一緒に「吸収促進成分」を摂取することによって吸収率が高まるということを突き止めました。この吸収促進成分としてあげられているものは、「ウコン」「マリアアザミ」「西洋タンポポ」「タウリン」「アーティチョーク」「黒コショウ抽出物」「リゾレシチン」の7つです。
実際にEPAのみを摂取した場合と、EPAと一緒に吸収促進成分を摂取した場合を比較すると、体内における吸収率が4時間後には約2倍に、6時間後には約1.5倍に増加したというデータがあります(小林教授監修のもとで行われた、30代から60代の方20名を対象に実施した実験による結果)。
発症する前に摂取することが重要
小林式EPAは食品成分である青魚の油を用いていることから、医薬品とは異なります。そのため、病気になる前でも飲用することが可能な点が大きなメリットです。発症したから摂取するのではなく、日常生活の中で小林式EPAを摂取することで血管の異常収縮を予防することができるため、冠攣縮性狭心症の予防にもつながると言えるでしょう。
もともと心臓疾患とは無縁な人であっても、血管の異常収縮が起こる可能性はあります。そのため、普段からEPAを摂取する習慣を持つことが重要と言えそうです。
冠攣縮性狭心症の体験談
2〜3ヶ月に一度のペースで発作がおきます。睡眠中、仕事中、くつろいでいる時など発作の起きる時間は不定です。
発作は、まず下顎が押しつぶされるような痛みがあり、その後喉の奥が熱く痛みます。続いて胸部中央が圧迫される感じがして、背部の痛みや右肩痛となり、長くても10分以内におさまります。ニトロ舌下で痛みは消失します。
心エコー、ホルター心電図検査では異常なし。心カテーテルでは基質的変化なし。アセチルコリン負荷にても明らかな攣縮認められませんでしたが、症状から見て冠攣縮性狭心症でしょうと診断されています。
2年前から2、3回ほど、突然胸に痛みを感じ、顎の下から胸に重苦しい痛みがありました。
一番激しい痛みは寝ている時に起こり、目が覚めて、冷や汗をかいていました。昨夜、また胸に痛みを感じ、救急外来で心電図をとりましたが、その時にはもう痛みは引いてしまっており、特に異常は認められないとのこと。
狭心症ならば、痛みのある時に心電図をとらないとわからないといわれています。また、自覚症状は、安静時狭心症によく似ているように思いますが、年齢から考えて狭心症の可能性は低いといわれています。
狭心症と診断され、冠動脈の異常をカテーテル検査するために入院しました。カテーテル検査の結果、バルーンの必要はありませんでした。
冠動脈を包んでいる筋肉が痙攣して狭心症を起こす冠攣縮性狭心症と診断され、今後は、薬でいきましょうとのこと。ノルバスク朝1錠と毎日貼っていたフランドルテープを止め、ニトロペンだけ必要なときなめることになりました。
昨年6月に胸痛を感じ、受診したところ、ホルター心電図にて明け方のSTの上昇と洞停止があるといわれました。8月に心臓カテーテル検査にて左冠動脈に冠れん縮が誘発されました。左の冠動脈は生まれつき細いとのことです。心臓電気生理学検査では洞機能はやや低下している程度でした。
担当医の話では、胸痛についてはこのまま飲み薬でコントロールしていくとのこと。脈の乱れに関しては気にすることはなく、しばらく様子をみましょう。しかし、今の仕事がハードでストレスが多いので続けるのはきついと思うとのことでした。
参考文献
[1] 冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)(pdf)
[2] 日本人心臓財団 「再び注目されている冠攣縮性狭心症ってどんな病気?」(pdf)



